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大阪高等裁判所 昭和47年(ネ)989号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は被告の負担とする。

事実

「原判決主文要旨」

一、被告は原告に対し原判決添付別紙物件目録記載の土地を明渡せ。

二、被告の反訴請求を棄却する。

三、訴訟費用は被告の負担とする。

四、第一項に限り二〇万円の担保を供するときは仮に執行できる。

「請求の趣旨等」

(本訴)

主文第一項同旨ならびに仮執行の宣言。

(反訴)

原告は被告のために右土地につき、門真市農業委員会に対し、賃借権設定許可申請手続をせよ。

「不服申立の範囲」

原判決全部

「当事者の主張」

原判決事実摘示のとおりである。

「証拠」(省略)

理由

次に訂正する外、当裁判所の認定と判断は、原判決の理由記載と同一である。

訂正

1、原判決六枚目裏の四行目ないし八枚目表の六行目までを次のとおりに訂正する。

『官公署作成部分については成立に争いがなく、その余の部分については証人橋周の証言(一回)により成立を認めることができる甲三号証、証人御田朝治郎、同橋周(一、二回)の各証言、および被告本人尋問の結果(但し橋証言と被告供述については後記信用しない部分を除く)ならびに弁論の全趣旨を合せて考えると、次の事実を認めることができる。

原告は自作地約二反と小作地約四反を耕作していて、本件土地(田)を昭和九年五月二〇日頃から訴外八尾栄三郎に賃貸していたが、同三七年二月一五日頃右賃貸借を事実上合意解約して本件土地の返還を受け、しばらくの間は野菜などを作つていた。しかし、原告は病弱であり、会社勤めの原告の夫も健康がすぐれなかつたため、同三八年三月に被告(本件土地の隣地で原告所有農地の賃借人)に一時的に賃貸することになり、被告との間に賃料は一箇年につき米一石とし、期間は一応同三九年三月までとするも原告において入用のときは何時でも無条件で返還する旨の賃貸借契約を締結して、本件土地を被告に引渡し、その後被告がこれを耕作するようになつた。ところが、農地の賃貸借ないしその解約につき府知事の許可が必要であることについては、原告も被告も知らなかつたので、右解約および、賃貸借について許可申請の手続をとらなかつた。その後原告は被告の希望により右賃貸借を同三九年二月と同四〇年二月の二回に亘り一年ごとに更新してきたが、これについても許可申請の手続はとられず、右賃貸借は農地法三条一項の許可を欠くものであつた。原告は同四一年二月頃被告に本件土地の返還を求めたところ、拒絶され、それから一箇年位経過後に本訴が提起された。

以上の事実が認められ、この認定に反する証人橋周、蔀巌の各証言および被告本人の供述は信用できなく、他に右認定を左右するに足る証拠がない。しからば、右賃借契約は、同法三条四項により効力を生じないものというべく、被告の賃貸借の抗弁は採用できない。」

2、原判決八枚目表四行目ないし六行目を次のとおりに訂正する。

『一時的なもので期間も一箇年の定めであつて、二回の更新をしたが、その期間も既に同四一年二月に終了していることは、前記に』

されば原告の本訴請求は理由があるが被告の反訴請求は理由がなく原判決は正当で本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

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